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他国任せの「諜報」のままでいいのか 「イスラム国」事件で突き付けられた「対外情報機関」創設の必要性

 

2015.2.18 11:00更新
安倍政権考】
他国任せの「諜報」のままでいいのか 「イスラム国」事件で突き付けられた「対外情報機関」創設の必要性
http://www.sankei.com/premium/news/150218/prm1502180004-n1.html

現地対策本部が置かれる日本大使館前で、ヨルダン市民と会話する中山泰秀外務副大臣。市民らがキャンドルを灯し、後藤健二さんらを悼んだ=2日、ヨルダン(大西正純撮影)
 イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」に日本人2人が殺害されたとみられる事件は、日本が「独自の情報」を持たない現実を改めて突きつけた。 米中央情報局(CIA)のような組織がない日本は、国際テロの脅威に対峙(たいじ)するにしても、他国の情報に頼らざるを得ないのだ。事件を教訓に「日本 版CIA」ともいわれる対外情報機関の創設を求める声が政府・自民党内に出始めているが、安倍晋三首相は創設へと決断するか。
死活的なテロ組織情報
 「どの国もテロの脅威から逃れることができない。関係国や組織の内部情報を収集することが死活的に重要だ。しかし、こうした国や組織は閉鎖的で内部情報の収集には相当の困難が伴う」
 首相は4日の衆院予算委員会で、イスラム国による事件を受け、国際テロに対処するための情報収集の重要性を、こう説明した。
  一方で、対外情報機関の設置に関しては「さまざまな議論があると承知している」と述べるだけだった。菅義偉(すが・よしひで)官房長官も4日の記者会見 で、創設の必要性を問われ、「情報収集を実現するための手段や手法、態勢のあり方について研究を深める必要があるとは考えている」と説明するにとどめた。 だが、首相と菅氏が対外情報機関の創設を視野に入れているとみていいだろう。

 首相は第2次政権発足間もない2013(平成25)年1月にも危機対応に追われた。日本人10人が犠牲になったアルジェリア人質事件だ。このとき も現地の情報が限られるばかりか、首相官邸にもたらされる情報は錯綜(さくそう)した。事件発生時は、首相は外遊中で、留守を預かった菅氏が首相と連絡を 取り合いながら初動対応に当たった。
 このときも現地の情報が限られるばかりか、首相官邸にもたらされる情報は錯綜(さくそう)した。今で こそ、国家安全保障会議(NSC)の事務局である国家安全保障局(谷内正太郎局長)に関係省庁の情報が集約される形を取っているが、当時を知る政府関係者 は「国家安全保障局があれば…」と悔やむ。
 首相は、こうした危機のたびに「情報不足」を痛感するとともに、「情報」が持つ重要性を認識し てきた。だからこそ、断片的な情報を一元化し分析する国家安全保障局を立ち上げ、国内の情報漏洩を防ぐための特定秘密保護法を、野党やマスコミの一部によ る猛反発を覚悟してまで成立させた。だが、それでも日本に欠けているのが、情報収集の機関だ。

首相はイスラム国による事件を受けて、「ヨルダンは極めて情報収集能力が高い」と述べ、海外で情報収集に当たる防衛駐在官を新たにヨルダンに置くこ とを検討する考えをすでに明らかにしている。各国の駐在武官防衛駐在官に相当)は世界各地で軍人同士の「情報サークル」を形成しており、「軍の情報機関 は同じ軍人にしか情報を渡さない慣習がある」(首相)ためだ。
 中谷元(げん)防衛相は「中東における軍の情報は必要性があるので従来希望してきた。ヨルダン派遣をはじめ必要な増員に努めていきたい。(日本人人質「殺害」事件を受け)さらに必要性は高くなった」と述べ、ヨルダン以外の国への増員にも意欲を示している。
 確かに日本がこうした「情報サークル」に加わるのには大きな意義がある。しかし、防衛駐在官を増員したところで、日本独自の情報をつかめるわけではない。
「情報」を持つ意味
  日本に対外情報機関がないことは、長い間、外交・安全保障上の欠陥と指摘されてきた。閉鎖的な北朝鮮や、構成が解明しにくい国際テロ組織の動向把握には、 特定の人物に接触し、人的なネットワークを通じた内部情報の入手が欠かせない。いわゆる「ヒューミント」(人的情報)だ。
イスラム国の事件を受けて、対外情報機関の創設に向けた動きもみられる。元防衛相の石破茂地方創生担当相は「情報収集する組織をきちんとつくること に取り組むかどうかだ。早急に詰めないといけない」と語り、検討を急ぐべきだとの考えを示した。自民党のインテリジェンス・秘密保全等検討プロジェクト チームは10日の幹部会で、創設に向け、有識者からヒアリングを始める方針を決定した。
 自民、公明両党は昨年4月、特定秘密保護法をめぐり、対外情報機関の創設に向けて協議を進めることを確認している。だが、これまで事あるごとに対外情報機関の新設が浮上してきたが、実現には至っていない。
  「情報」は日本の外交力と防衛力を補い、国際社会では、それを持つ者と、持たざる者の差は歴然としている。日本独自の「情報」を持ちえれば、相手の情報機 関と交わせる情報の「質」も異なる。政府関係者は「軍人同士のサークルがあるように、『情報』を扱う者同士では信頼感が違うようだ」と指摘する。日本政府 の組織にヒューミントの専門組織が誕生すれば、情報収集の網を広げられる可能性が高い。
 首相は「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げ、積極的な首脳外交を展開してきた。ヨルダンやトルコの首脳と緊密な関係を築き、イスラム国への 対処では「普通では考えられない」(首相周辺)ほどの厚遇を受けてきたとされる。これは「安倍外交」の成果と評価するのが常識的だ。
 だが、国際テロの脅威は時も場所も問わない。相手の「好意」や「友情」だけに頼り切るのは現実離れしている。やはり日本独自の情報が必要なのである。(政治部 峯匡孝)