「日本の侵略者は極めて残虐」と中国・習近平国家主席 米の難色無視し中韓共闘


2015.9.3 06:00更新
【歴史戦 第13部 戦後70年抗日行事(上)】
「日本の侵略者は極めて残虐」と中国・習近平国家主席 米の難色無視し中韓共闘
http://www.sankei.com/world/news/150903/wor1509030004-n1.html

抗日戦争勝利行事に出席する首脳ら
 北京の人民大会堂。2日、中国国家主席習近平抗日戦争勝利に貢献したとして退役軍人やその遺族、外国人ら計30人に記念メダルを授与した。中国国営新華社通信によると、習は演説でこう述べた。
 「日本の軍国主義の侵略者は極めて残虐で、この世のものと思えぬほどの悲惨な手段で中国人民を扱い、大量虐殺をもって、屈服させようとたくらんだ」
 中国は抗日戦争勝利70年を記念する一連の行事について「特定の国を標的にしたものではない」と一貫して主張してきたが、この日の習は違った。同じ人民大会堂で昼に韓国大統領の朴槿恵と会談した習は冒頭、こうも述べた。
 「両国人民は日本の植民侵略に対する抵抗と、民族解放を勝ち取る戦いで団結し互いに助け合った」
 朴も応じた。
 「前の世紀で両国が共に経験した苦しい歴史が、今日の友好の大切な土台になっている」
 歴史問題で中韓が歩調をあわせようとする姿勢を鮮明にしたといえる。この日、3日に行われる抗日戦争勝利記念行事に参加する世界31カ国の首脳級で、習と昼食の機会を得たのは朴だけだった。韓国大統領府は「中国政府による格別の配慮」と強調している。
習は今回、朴ら外国首脳を初めて軍事パレードに招待した。軍事パレードは単なる軍事力の誇示ばかりではなく、「アジアの盟主」として中国の国力を内外に印象づけるねらいがある。
 日本だけでなく欧米主要国はいたずらに「過去」に焦点を当てた行事を危惧し首脳の出席を見合わせた。そうした中で、米国の同盟国である韓国の国家元首が同席することは習にとって大きな意味を持つ。
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 欧米各国が出席を見送る中で中国が代わりに“動員”したのは、アジアやアフリカなどの途上国の首脳だった。いずれも中国の経済力に依存する国々だ。ロシアが5月に行った軍事パレードをしのぐ首脳級の出席を取り付け、体裁を整えた。
  「抗日戦争」とは何の関係もないアフリカ諸国の参加に向け、中国は記念行事について「抗日戦争勝利」と同時に「反ファシズム戦争勝利」を枕詞に使った。外 務省報道官、華春瑩は2日の記者会見で「いくつかの国は抗日戦争とは直接関係はないが、彼らは中国人民が第二次大戦で払った犠牲と貢献を高く認め称賛して いる」と説明した。華はさらに続けた。「歴史の事実は中国が地域や世界の平和の断固たる保護者、建設者、貢献者であることを証明している」
 中国のなりふり構わぬ姿勢を際立たせたのはスーダン大統領、バシルの招待だ。ダルフール紛争をめぐる戦争犯罪などで国際刑事裁判所(ICC)から 逮捕状が出ているバシルの招待に米国は反対した。華は1日の会見で「スーダンを含むアフリカの人々は反ファシズム戦争の勝利に重要な貢献をしており、大統 領の招待は合理的だ」と反論。習は同日、バシルと会談した。
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  米国は朴の出席にも難色を示した。このため朴は米国に配慮し、米アラスカ州で8月末に開かれた北極の環境問題などに関する国際会合に外相尹炳世を派遣し た。米欧以外で外相を派遣したのは韓国だけだったという。米大統領、オバマも重視する会合に尹を送り込み、米国務長官、ケリーに軍事パレード参観について 説明させた。
 歴史をめぐる中国との対日共闘を強調しすぎて日米の反発を招くのを警戒してか、韓国大統領府は朴が習に日中韓首脳会談の開催を働きかけたとし、「会談で最も大きな成果の一つだ」とアピールしてみせた。
3日、天安門楼上に朴は習と並ぶ。朝鮮戦争に「義勇軍」の名目で参戦し、韓国側と戦火を交えた中国人民解放軍のパレードに、朴は2日に習にみせたよ うな笑顔を振りまくのか。世界に映像が生中継される中、韓国内では朴には「かなりの表情管理が必要だ」(外交筋)との声も出ている。
 官房長官菅義偉は2日の会見で中韓接近を聞かれるとこう突き放した。
 「従前からそういう傾向だったのではないでしょうか。いずれにしろ第三国のことなので政府として発言は控えたい」(敬称略)
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 今年を「抗日戦争と世界反ファシズム戦争勝利70周年」と位置付ける中国が3日に開く記念行事。歴史戦第13部は行事をめぐる日中韓などの駆け引きに焦点を当てる。