平和ボケの集団的自衛権否定論者はトランプ氏提案にどう答えるのか

 

平和ボケの集団的自衛権否定論者はトランプ氏提案にどう答えるのか

2016.04.01

http://www.zakzak.co.jp/society/domestic/news/20160401/dms1604010830003-n1.htm

 


ドナルド・トランプ氏(AP)【拡大】

 米大統領選の共和党候補者選びで、ドナルド・トランプ氏が大躍進している。数々の過激な発言を繰り返しているが、日本として真剣に考えるべき課題も提供している。

 その一つが、安全保障問題だ。トランプ氏は、北大西洋条約機構NATO)や国連などの国際機関への資金分担は不相応に多いとし、日本や韓国、サウジアラビアといった同盟諸国との関係についても不公平だとしている。

 そして日本に対して、在日米軍の負担増額を要求し、できなければ撤退し、最終的には日本の核兵器保有を容認するとしている。

 トランプ氏の発言は、米国が日本を必ず守ってくれるという平和ボケ的発想を考え直すいい機会になる。

 防衛については、いろいろな立場がある。一つは非武装中立の立場で、国連などの場で外交努力をするが、自国による防衛をしないというものだ。この“お花畑”論を唱える人はいまも結構多い。

 防衛を行う場合、他国との共同防衛か自主防衛かという選択肢がある。前者は日米同盟を考えると現状に近い。後者は、対米追随ではなく完全自主防衛であれば、いずれ核兵器保有も視野に入れなければならない。

 日米同盟と自主防衛のコスト比較については、防衛大学校教授の武田康裕氏と武藤功氏による『コストを試算!日米同盟解体 国を守るのに、いくらかかるのか』(毎日新聞社)という本が参考になる。

 同書の中で、日米同盟のコストは1・7兆円、自主防衛コストは24~25・5兆円と書かれている。

自主防衛コストのうち20兆円程度は貿易縮小などの間接的な経済の悪影響が含まれており、これをどう見るかで意見が分かれるものの、日米同盟コストに今の防衛関係費を加えても6・7兆円であり、自主防衛コスト24~25・5兆円より小さいという結論は変わりないだろう。

 お花畑議論を論外として、日米安保と自主防衛のどちらを選ぶかというと、コストの問題から、現実問題としては日米安保にならざるを得ない。自主防衛とすれば、トランプ氏が言うようにいずれ核兵器まで行かざるを得ないので、日本としては選択しにくい。

 日米安保を維持する立場として、トランプ氏のように負担増を求めてきたとき、集団的自衛権を認めるか否かで、交渉スタイルは大きく異なる。

  集団的自衛権を認めれば、米国側も日米安保にメリットがあるので、日本側の負担は抑えられる。一方、集団的自衛権を認めないと、日本側の負担が際限なく大 きくなるか、米軍が撤退するかという事態になる。すると、集団的自衛権の否定は結果的に自主防衛、ひいては核保有の流れになってしまうだろう。

 集団的自衛権の否定論者は、トランプ氏の提案にどう答えるのだろうか。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一