日弁連の“左巻き”政治活動に異論噴出 日弁連会長「『9条守れ』は政治的発言じゃない…」


2015.9.7 07:00更新
【日本の議論】
日弁連の“左巻き”政治活動に異論噴出 日弁連会長「『9条守れ』は政治的発言じゃない…」
http://www.sankei.com/premium/news/150905/prm1509050015-n1.html
安全保障関連法案に反対し、記者会見で「違憲」と「廃案」のプラカードを掲げる日弁連の村越進会長(手前中央)ら法曹関係者=8月26日午後、東京・霞が関弁護士会館(栗橋隆悦撮影)
 弁護士に強制加入が義務づけられている日本弁護士連合会(日弁連)や全国の弁護士会の“政治的活動”に対し、内部から異論が上がっている。若手弁 護士を中心に活動を疑問視する声が出ているといい、権力に干渉されず、独自の自治権が認められた弁護士会の活動のあり方が問われている。(太田明広)
「政治的発言とは考えていない」
 「戦争する国絶対反対!」
 「9条守れ!」
 日弁連が8月26日に主催した安全保障関連法案廃案を訴えた抗議行動。日弁連の村越進会長も東京・日比谷公園から国会議事堂までデモ行進に参加した。
 この日の会見で、村越会長は「立憲主義の破壊だけは認められない」と訴えた。日弁連はこれまでも会長声明や理事会決議で、法案反対の立場を打ち出している。
 強制加入団体の日弁連が特定の政治的意見を掲げることへの懸念。本紙記者が会見で質問したところ、全国の弁護士や大学教授ら約300人が集まった会場から「何を言っている」「帰れ!」などの怒号が飛ぶという場面もあった。
 村越会長はデモ終了後の取材に「『戦争法案』というレッテル張りはしていない。『9条を守れ』ということまではぎりぎりの範囲だと思う。政治的な発言とは考えていない」と話す。
 ただ、デモ行進前に約4千人(主催者発表)が集まった集会では、女性グループが「戦争法案なんていらない」などの横断幕を掲げ、反対の気勢を上げた。
 民主党辻元清美議員や社民党福島瑞穂議員が駆けつけたほか、政党からの参加者で最多だった約10人の共産党議員も駆けつけた。

 ある弁護士会幹部は「活動の趣旨が違う団体や政党との協力は誤解される恐れがあり、慎重にすべきだ」と語る。
「任意団体にすべき」との声も
 「弁護士が全員『左』だと思われるのは腹が立つ」
 「政治的意見ばかりの弁護士会は任意団体にすべきだ」
  都市部の弁護士会幹部は、特に若手からの批判を耳にする。「弁護士会まで正式な批判は上がってこないが、若手の不満は大きい」と指摘。その上で、「任意団 体として国から監督された立場で、国賠訴訟などで国と闘うのは難しい。弁護士自治は守らなければならないので、サイレントマジョリティー(静かな多数派) への配慮も必要だ。強制加入団体の枠から離れた政治的な主張などをし続けるといつか不満が爆発しかねない」と話す。
 日弁連関係者は、弁護士会で要職に就くのは会の活動を熱心にしてきた人だと明かす。「弁護士会は権力に対するチェック機能を持たないといけないと考える人が多く、自然と反権力志向になる」と説明する。
  さらに、「都市より地方の方が弁護士会活動に熱心な人が多く、その代表が日弁連で理事などを務めるため、数の上でも反権力の声が大きい」と指摘。一方、 「都市部のビジネス中心の弁護士は会の活動に冷淡な人も多い」と話す。ただ、弁護士会が持つ懲戒権限を意識し、公然と批判する弁護士は少ないという。
 弁護士資格を持つ自民党稲田朋美政調会長は「賛否が分かれる政治問題への意見表明や反対活動は強制加入団体として好ましくない。『日本弁護士政治連盟』という加入を強制されない政治団体があり、そちらでされればよいと思う」とコメントしている。
訴訟にまで発展
  日弁連や全国の弁護士会が打ち出す“政治活動”に対する懸念は、訴訟という形でも表面化している。どのような考え方を持つ弁護士も、日弁連弁護士会に加 入しなければならない。そうした強制加入団体が必ずしも総意とは言い切れない、特定の立場を取ることの是非についての判断が注目される。
 「日弁連弁護士会の目的から逸脱しており、違法無効だ」
 日弁連などの特定の政治的主張について、京都弁護士会所属の南出喜久治弁護士は日弁連会長らを相手取り、意見書や会長声明の削除などを求めて、今年7月に東京地裁に提訴した。
 南出弁護士は「安全保障法制改定法案に反対する意見書」や「集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定に抗議し撤回を求める会長声明」などのホームページ(HP)上からの削除を求めており、9月7日に第1回口頭弁論が開かれる。
 過去にも政治的な問題で特定の立場を取った日弁連に対して、弁護士グループが裁判という手段に訴えたことはある。
 昭和62年に行 われた日弁連の定期総会で、国家秘密法案への反対決議が採択されたことに、決議無効を求めて提訴した。日弁連によると、1審東京地裁で「組織としての日弁 連の意見が、会員の弁護士個人の意見と同じだとは一般に考えられない」などとして請求は棄却され、平成10年に最高裁で確定。日弁連が声明を出す際には、 この判決も参考にしているという。
 南出弁護士は「個々の弁護士に求められる使命と、強制加入の団体の目的を区別できていなかった」など と、過去の訴訟と今回の訴訟の違いを指摘。「弁護士会は強制加入させた弁護士から会費を徴収し、脱退の自由も保障されていない。だからこそ政治的中立を守 る必要がある」と訴える。