安保法制と政治 脅威への備えは怠れない


2015.9.13 05:02更新
【主張】
安保法制と政治 脅威への備えは怠れない
http://www.sankei.com/column/news/150913/clm1509130005-n1.html

現実の脅威をしっかり認識し、国の守りに努めることなくして国民の負託にどう応えるのか。安全保障関連法案の国会審議を通じて浮かび上がった国政の一面である。
 集団的自衛権の限定行使を認め、日米同盟の抑止力を強めなければ、日本の平和と安全を守りきれない時代になった。安倍晋三政権が安保関連法案の成立を急いでいるのはそのためだ。
 「戦争ができる国」になるなどとレッテル貼りに終始する、反対派の発想とは全く無縁だ。必要なのは、日本の危機をいかに減じるかという現実の政策論である。
 法案が5月15日に国会提出されてから約4カ月のうちにも、日本を取り巻く安保環境は悪化してきたことを、与野党の議員は直視してほしい。
 最大の懸念要因は中国である。日米を射程に収める弾道ミサイルや米空母攻撃用の対艦弾道ミサイルを披露した、先の軍事パレードを警戒するだけでは足りない。
 中国海軍の5隻からなる艦隊が今月初旬ごろ、アラスカ沖で米国領海に進入した。オバマ大統領がアラスカ州を訪問中だった。
 軍艦は他国の領海でも平和や安全を害さなければ通過できる無害通航権を持つ。だが、習近平政権が米国の出方を試した可能性が高いと日本政府もみている。
 南シナ海では、中国は人工島の軍事拠点化を進めている。米国に対して、中国が一層挑戦的になっているのは明白である。
8月下旬には日本海で、中露両国海軍が合同演習を行った。上陸訓練も含まれ、日米や台湾を牽制(けんせい)する意図が読み取れる。
 これらは現実の脅威の高まりを示す。日米が協力関係を強め、地域の秩序を保ち、平和に備えようとするのは当然のことだ。
 安保法案に対し、「日本が米国の戦争に巻き込まれる」といった議論が行われている。中国を刺激して危険だという主張もある。
 国民の安全に責任を負うこととはかけ離れた議論が国会では繰り返されているが、集団的自衛権の限定行使は、あくまで日本を守るための行動だ。外国軍への後方支援は世界の平和にも寄与する。
 参院で採決をめぐる攻防が続いているが、新たな安保法制の下で日本が合理的に防衛努力を進め、同盟の抑止力を強めることこそ欠かせない。その責務は政府与党が果たすしかない。